本質的顧客ニーズを追求する『カルビーフューチャーラボ』山邊昌太郎氏が作り出す新たな価値
戦後間もない1949年4月、ここ広島の地にカルビーは誕生した。かっぱえびせん・ポテトチップス・じゃがりこ等、多くのヒット商品を生み出してきたカルビーは、間食文化にイノベーションを起こした。そして今、『カルビーフューチャーラボ』により、再びこの広島でイノベーションが起ころうとしている。
2018年に発売された『地域応援スナック・ふるシャカ』は、カルビーフューチャーラボの第一弾となる商品。カープ坊やが目を引く大胆なデザインと、振って音を鳴らすというユニークさで話題となった。この3月には、東北楽天ゴールデンイーグルスのパッケージで東北版が発売されたばかりだ。
新商品の開発を通じて、既成概念にとらわれない新たな価値を追求し続けるカルビーフューチャーラボの山邊昌太郎氏にお話を伺った。
Text by MASUBE Sachi
Photographs by TAGASHIRA Yoshinori
自由な発想で新商品を創る
前述したように、広島はカルビー発祥の地である。カルビーの本社が東京に移った現在も、「カルビーは広島の会社」とカルビーを愛する広島県民は多い。その広島でカルビーフューチャーラボが誕生した意味とはどういったものなのだろうか。
「カルビーは今までに、かっぱえびせん・ポテトチップス・じゃがりこ・フルグラなど、多くのヒット商品を世に送り出してきました。しかし、私たちは今までのカルビーとは全く違うアプローチで商品開発をしています。カルビー本社のある関東圏ではなく広島を拠点としているのもそのためで、今までのカルビーの文化や慣例を超えて自由な発想で新商品を開発するために作られた出島が『カルビーフューチャーラボ』なんです。」
「2018年に発売した『ふるシャカ』は地域応援スナックというコンセプトで、広島版だけではなく、東北版も発売となりました。それぞれ地域限定での販売なのですが、その地域に行かなければ手に入らない商品・体験を作ることで、わざわざ都会からなになに?って見にきてもらえるような面白いことが起こせないかなぁと考えています。だって、何もかも東京発信って面白くないじゃないですか。その『面白いこと』の発信源が、実は広島。そんな形を創り出したいとも思っています。」
圧倒的な顧客志向
カルビーフューチャーラボの理念は『圧倒的な顧客志向』。その言葉のとおり、カルビーフューチャーラボではサポーターと呼ばれる一般消費者の人々が、アンケートやインタビュー・試食といった形で商品開発に協力している。カスタマーの生の声を、商品開発にダイレクトに活かしているのだ。
「私たちは元々、メンバー6人中4人がカルビー外から集まっています。つまり、カルビーにおける新商品開発に関して全員が先入観のない状態だったのです。だからこそ私たちは、カルビーが作れるものを作るのではなく、カスタマーが求めるものを創るチームでありたいと思っています。そのためには『圧倒的な顧客志向』が重要なのです。私たちはサポーターさんにアンケートやインタビューをお願いしますが、探っているのは本人ですら気づかない無意識下にある潜在的なニーズです。そこを掘り下げていくことで、今まではできなくて当然だと諦めていたことが解決できたり、考えたこともなかったけれど実は欲していた本質に近い欲求を満たせたりする。それこそが、私たちが目指している既成概念にとらわれない新たな価値なのです。」
五感を揺さぶる商品を
既成概念にとらわれることなく、圧倒的な顧客志向でカスタマーが本当に求めるものを生み出すーー。言葉にするとシンプルだが、実際には時間も手間もかかり、なによりストイックに追求を続けなければならないことだ。そこに挑むカルビーフューチャーラボは、今後どんな展開をしていくのか。
「かつてカルビーの創業者である松尾孝は、瀬戸内海で獲れた小エビが海辺に干してあるのを目にして『お菓子』を創りました。食が豊かでなかった当時の日本において、安心安全な美味しいお菓子は人々を楽しませワクワクさせたはずです。現在は食が豊かになり、『美味しくて安心安全』は飽和しています。しかし、時代は変わっても人々をワクワクさせるようなものは必ずどこかにあるのです。ワクワクすること、それは生きる活力に繋がります。だから私たちはこれからも、圧倒的な顧客志向でカスタマーが本当に求めるものを追求していきます。それは『お菓子』ですらないかもしれません。創りたいのは、受け手がドキドキ・ワクワク・感動するもの。現在もそういった商品開発を進めていますので、ぜひご期待ください。」
「人は、経験を重ねるにつれ無意識のうちに様々なことにバイアスをかけて物事を考えてしまうものです。しかし、赤ん坊のようにすべてを受け入れ、乾いたスポンジのようにすべてを吸収したい。すべてをゼロから考えたい。そう思っています。」
そんなふうに語った山邊氏。
そんなフラットな山邊氏のスタンスこそが、カルビーフューチャーラボが新たな価値を生み出すためのレシピのひとつに違いない。
地域未来
人を想い、地域とともに未来を作る
よく、経済成長を遂げた日本は物質的な豊かさを手に入れた反面、心の豊かさを失ったという言い方をされますよね。けれど時代が変わっても、結局は人々に必要とされるものが愛されるものであって、続くものなのです。地域の人々の声に耳を傾け、地域の人々と協力し、地域発の本当に愛されるものを作り出すことは、これから先の社会に向けて、僕たちカルビーフューチャーラボができることだと思います。
地域とは広島に限ったことではなくて、大きなくくりで考えると、日本も地域だし、アジアも地域ですよね。広島から大きな地域の輪をひろげていければ、そんな風に考えています。
取材先情報
会社名(店舗名) | 株式会社カルビー Calbee Future Labo |
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ご担当者様 | 山邊 昌太郎 |
所在地 | 広島県広島市南区松原町5-1 BIG FRONTひろしま7階 |
電話番号 | 082-264-6035 |
営業時間 | 平日 9:00〜17:00 |
定休日 | 土日祝日 |
業務内容 | 新商品の企画・試作 |
サイトURL | https://www.calbee.co.jp/cflabo/ |
取材時期 | 2019年 |
※ このページ内の情報は、取材当時のものであり最新のものと異なる可能性があります。