世界を魅了する広島の植物屋『叢』代表、小田康平氏が語る唯一無二の価値と物語
個性的な造形の多肉植物やサボテンを取り扱い、国内外で大きな注目を集める植物屋『叢』。その本拠地は、広島市西区の静かな町の一角に位置している。
喧騒から離れたその場所は非日常的な空気でひときわ異彩を放っており、店内に一歩足を踏み入れると、土の香りとともに個性的な表情の力強いサボテンたちが圧倒的な存在感で出迎えてくれる。
そんな叢の作品はイギリスのライフスタイルマガジン『Wallpaper』のDESIGN AWARDS 2013で受賞する他、銀座エルメスメゾンのディスプレイを手がけるなど、感度の高い層に支持を受けている。
広島から植物業界をリードする叢の代表、小田康平氏にお話を伺った。
植物の持つストーリーを伝える植物屋『叢』
叢という店名は、小田氏が植物を見つける場所を叢と呼んでいたことに由来するという。アルファベット表記は“Qusamura”。この“Q”には込められた想いがある。
「情報の氾濫した現代社会で、人々は立ち止まろうとはせず様々なものが流れては消えていっています。そんな中で僕は、人々にきちんと立ち止まってもらえるようなしっかりとした植物のストーリーや価値を伝えたいと思っています。植物の持つ造形やストーリーは本当に面白いので、それをパッと見で判断されるのではなく、きちんと興味を持っていただきたいんです。そのきっかけとして『これは一体なんだろう?』という“Question”を感じてほしいと思っています。」
叢はただの植物屋ではなく、植物のもつ見えない本質の価値やストーリーを伝える植物屋なのだ。
叢が表現するもの
もともとご両親が営まれていた花屋で働いていた小田氏。しかし、切り花でのごく限られた時間を使った表現には限界を感じていたという。
自らの表現の方向性として土付きの植物に可能性を感じた小田氏は、2012年に叢を立ち上げる。叢では、土付きの植物の中でも主に多肉植物やサボテンが扱われている。
「大量生産の植物は、まるで工業製品のように規格化され、画一化されています。それに比べ、多肉植物やサボテンは、ひとつひとつまるで違うものが作られます。良いもの、そうでないもの、その価値というのは、作る人や見る人がそれぞれで定めることになります。自分にとって、自分の価値観を表現しやすいのが多肉植物やサボテンだったんです。」
叢のコンセプト“いい顔してる植物”からも分かるように、画一化されたものではなく個性的な側面のある植物に小田氏は価値を見出しているようだ。
過去、現在、未来を表現する
小田氏は自身の仕事に対する思いを次のように語った。
「僕が価値を感じるものの共通点として『時間』という要素が深く関わっています。なので、自分の表現方法としては時間軸があるものを扱っていきたいと思っています。植物には育ってきた「過去」があり、「現在」の造形があり、これから生長していく「未来」がある。なにより僕は植物が好きなので、植物を通じて自分の価値観を表現することができます。だから植物を扱っていますが、極端な話、自分の価値観を表現できてその価値観に共感してもらえるなら、植物でなくてもいいんです。」
植物でなくてもいいと言いながらも、小田氏の言葉の端々からは、植物への畏敬の念を感じる。そんな小田氏が、植物業界に対して思うことを伺った。
「これだけ技術革新や新たなものが生まれるこの時代において、植物業界というのは、他の業界に比べてまだまだ可能性に満ちていると思います。僕が他業界の中で植物の価値を伝えたり、コラボレートしたりしていくことで、新たな価値を生み出せればと思っています。今まで植物の魅力を知らなかった人たちに植物を面白いと感じてもらって、植物業界を次のステージに進めることができればという想いもあります。」
「叢を立ち上げた当初は、鉢植えのサボテンをメインに販売していました。それが今は、徐々に『この部屋全体を植物でコーディネートしてほしい』といったご依頼をいただくようになりました。最初は鉢植え中の限られたスペースに向き合っていましたが、建物全体や敷地全体というように、関わる空間が大きくなってきたんです。今後はもっと大きなエリアで、街づくりというようなことにも携わっていけたらと思っています。」
広島の静かな街の一角にある、箱庭のような空間「叢」。
そこから生み出される植物たちとその価値は、さらにスケールを広げ、これからも多くの人を魅了していくに違いない。
植物未来
植物の一番楽しい部分は「育っていく未来」
植物が育った環境やこれまでの歴史は「過去」、造形の面白さや不思議さは「現在」だと感じます。もちろんその部分が植物の魅力だと思っていますし、見る方にもお伝えして感じていただきたいポイントではあります。
けれど実は、植物の一番楽しい部分は、元気に育つ様の「未来」なんです。
植物の関わり方や育て方、そんな「植物の未来」を、もっと私たち植物業界のものがフォローして関わっていくことで、植物を楽しいと思ってくれる人が増えてほしいですね。そうなれば、「植物の未来」は明るいんじゃないかと、そう思うんです。
取材先情報
会社名(店舗名) | 叢 - Qusamura |
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ご担当者様 | 小田 康平 |
所在地 | 広島市西区三篠北町1-34 1F |
電話番号 | 082-836-7107 |
営業時間 | 12:00 - 19:00 定休日:火曜 |
業務内容 | 植物と関連商品の小売販売 |
サイトURL | http://qusamura.com/ |
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取材時期 | 2018年 |
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