日本酒の魅力を味わい尽くす『小石sakebar』店主、吉田大輔氏の業界を超えた挑戦
広島は酒どころである。古くからある老舗の蔵、想いのある蔵が多く残っている。そんな酒どころ広島で、日本酒の魅力を存分に味わえるのが、常時100種類の日本酒を揃える『小石sakebar』である。
小石sakebarは、隣接する和食の名店『石まつ 三代目』の姉妹店として2014年にオープンした。木とガラスを使い、和モダンな雰囲気に仕上げた店内。カウンターの奥には、美しい酒器の数々が並ぶ。雰囲気の良い空間で、豊富な種類の日本酒を楽しみながら、隣の石まつから運ばれてくる丁寧な仕事の和食をいただけるのだから、客足が途絶えないのも頷ける。
小石sakebarから日本酒の魅力を発信する、店主の吉田大輔氏にお話を伺った。
Text by MASUBE Sachi
Photographs by TAGASHIRA Yoshinori
キーとなるのは『トータルコーディネート』
近年にわかに日本酒ブームと言われているが、それでも日本酒を身近な存在として親しむ人はまだ多くない。
和食に携わる者として日本酒のシーンをもっと盛り上げたい、もっと身近なものとして親しんでもらいたい、そんな想いで小石sakebarをオープンさせたという吉田氏。その重要なキーとして、吉田氏は繰り返し『トータルコーディネート』という言葉を口にした。
「日本酒をメインにおきつつ、日本酒に合う和食であったり、心地よい空間であったり、全体のしつらえをトータルでコーディネートして『和』を感じてもらいたいと思っています。特別なこととしてではなく、あくまで身近に感じていただきたい。女性お一人でも気軽に寄っていただけたり、日本酒には馴染みがないけどちょっと行ってみようかなと思ってもらえたり、そんな場を作りたいと思っています。」
吉田氏曰く「ゼロ杯を1杯に」。日本酒、和食、酒器やインテリア、全てがトータルコーディネートされた小石sakebarは、今後さらに日本酒の魅力を発信していく中心的存在となるだろう。
四季を感じるひと時を提供する
吉田氏は、小石sakebarを通じて提供する価値について、次のように語った。
「日本酒と和食を通じて、日本の四季の豊かさを感じていただきたいと思っています。小石sakebarでは始めに先付3種をお出しするのですが、節句の時期には節句にちなんだお料理をお出しします。ちょうど今の時期は9月9日の菊の節句にちなんで、菊をあしらったお料理をお出ししていますよ。」
「もちろん日本酒にも、その季節に最も適したお酒というものがあります。冬に作られたお酒は、春まではフレッシュな生酒として、夏には冷酒でさっぱりと、秋には熟成して秋あがりや冷やおろしとして……。同じお酒でも、熟成の進み方などで、様々なタイプを楽しめるんです。」
季節のお酒と、季節のお料理を、ゆっくりと味わう。小石sakebarが提供するのは、日本酒を通じた『四季を感じるひと時』なのだ。それは、教養と感性が磨かれ、人生が豊かになるひと時である。
業種を超えた挑戦
もともとはコンピューター技術者として働いていた吉田氏。先代に当たる二代目の引退をきっかけに、これまでとは全く違う料理人という人生を歩むことを決意する。その後は、並々ならぬ努力と行動力で名店『石まつ 三代目』の看板を守り続け、さらに小石sakebarをオープンするなど、精力的に活動されてきた。
全く違う業種から料理人という道を選んだ吉田氏にとって、業界はどのように見えているのか。
「広島は、素晴らしい生産者の方や醸造家の方と直接交流が持てる、恵まれた環境です。その価値を、カウンター越しにお客様にお伝えすることが僕らの役割だと思っています。また、お客様から生の声を聞けるのも自分たち。僕ら飲食店がハブとなって、生産者や醸造家の方々とともに、全体で良くなっていけたらと思っています。」
「将来的には、広島全体のブランドアップを目指しています。広島の食や広島のお酒をトータルコーディネートし相乗効果で価値を高めることで、結果的にそれぞれの価値も高まっていくと思います。それを成し遂げるためには、『強い想い』と『まず一歩を踏み出す』こと。これを忘れずに、これからもやっていきたいですね。」
業界を超え、広島全体を向上させたいという吉田氏。他業種から飛び込んだ経験を持つ吉田氏だからこそ生まれる発想と言えるのではないだろうか。これからの広島を牽引する吉田氏のチャレンジは、今後も大いに注目されるに違いない。
sake未来
トータルコーディネートで、食べることを豊かに
日本酒を切り口に伝えたいのは、食の教養や食の文化を知って「食べること自体を豊かにしたい」ということです。お酒だけではない、和食だけでもない、全体のしつらえがトータルで素晴らしいものを提供することで、そのきっかけづくりができると嬉しい。
そういう文化をつくるのに、一人では限界があります。今は、料理人同士の勉強会を主催したりもして、ひとりひとりが高まることで全体が上がっていけたらと思っています。
取材先情報
会社名(店舗名) | 株式会社 石松(小石sakebar) |
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ご担当者様 | 吉田 大輔 |
所在地 | 広島県広島市中区流川町3-14 宏和6ビル1階 |
電話番号 | 082-298-1510 |
営業時間 | 月曜日-木曜日 18:00 - 24:00/金曜日 18:00 - 26:00/土曜日(連休初日) 15:00 - 26:00 定休日:日曜 |
業務内容 | 日本酒をメインとしたsakebar |
サイトURL | http://koishi-sakebar.com/ |
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取材時期 | 2018年 |
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