『ユニークノート 』代表、柴田徹也氏がゲーム音楽を通じてプレイヤーに届ける感動

MUSIC

東京都世田谷区にある、ゲーム音楽を中心とした楽曲制作・サウンド開発を行う企業『ユニークノート』。これまでに『ファイナルファンタジーシリーズ』『大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ』『モンスターハンターシリーズ』といった、国民的、世界的人気を博すタイトルに多数関わっている。

同社は、2009年7月にカプコンのサウンド出身である柴田徹也氏と青木佳乃氏によって設立され、現在10周年を迎えている。過去10年に数多くのビックタイトルに関わり、今やゲーム音楽業界を牽引する企業となったユニークノートが見据える、次の10年、そしてその先の未来とは一体どんなものなのか。代表の柴田徹也氏にお話を伺った。

Interview with NISHINAKA Masakazu

Text by MASUBE Sachi

Photographs by ANDO Keisuke

音楽との出会い、そして歩み

柴田氏といえば、カプコン在籍時には20作以上のタイトルに関わり、自身が作曲した楽曲が米国“G.A.N.G.Award”にノミネートされるなど、多くの功績を持つ作曲家である。2009年にユニークノートを設立してからもさらに多くのタイトルに関わりながら、現在ではテレビ・ラジオ・ミュージカルの作曲やアーティストの楽曲編曲にも参加するなど、活躍の場が広がっている。そんな柴田氏は、どのようにして音楽と出会ったのだろうか。

「母親が元音楽教師で、僕が小さい頃にはピアノ教室をやっていました。そんな母親の影響で、僕を含めた3人の兄弟全員が幼少期から音楽を習っていました。兄と姉はすぐに辞めちゃったんですけど、僕は音楽が楽しかったし、好きだったんです。家には母のピアノ教室で使うレコードがたくさんあって、それを片っ端から弾いているような、そんな子供でした。僕が自分のお小遣いで買った、初めてのレコードは“シューベルト”。当時、兄姉からは『変わっている』と散々言われましたね(笑)」

その後もベースやジャズなど、様々な音楽に親しんだ柴田氏。しかし実は、大学は法学部の出身であり、卒業後は一般企業に就職する予定だったという。

「内定ももらっていざ岐路に立った時、心にモヤモヤしたものがあることに気づきました。“本当にこのまま人生を歩んでいけるんだろうか?”と。10年後にスーツを着て自分の働く姿が想像できなかったんですね。そこから“ゲーム会社のサウンド部門”という選択肢を知った僕は、アルバイトをして買ったシンセサイザーで就職活動のための曲を作って、その結果カプコンに入社することができました。それが僕にとっての、初めての作曲でした。」

ユニークノートが創り届けるもの

そこから柴田氏は12年のカプコン時代を経て、同じくカプコンのサウンド出身である青木氏とともにユニークノートを設立するに至る。

「会社設立にあたっては、味で勝負する飲食店のように、“とにかくいいものを作り続けたい、クオリティで勝負したい”という想いがありました。僕も青木も一作曲者としての道を極めたいからこそユニークノートを設立したので、会社としての評判を伸ばすのは広報や宣伝よりもまず、クオリティでありたいと思ったんです。」

「そんな風に作曲に特化してきた僕らですが、仕事の特徴としては“クオリティの高いものを、早く、たくさん作れる”という自負があります。例えば僕もカプコン時代はそうでしたが、インハウスの作家さんは出勤や打ち合わせ、会議などで、意外に作曲に割ける時間は多くありません。ですが僕らは100%作曲に時間を使うことができる。そうやって膨大な数の作曲が積み重なった結果、今ではゲームタイトルと大まかなジャンルを聞けばどんな楽曲がマッチするかすぐに判断できるという特殊能力が身につきました(笑)。もちろん昔はどんな曲がいいか調べたりCDを聴いたりして構想を練っていましたが、今は多い時には1日3曲の作曲をすることもある中で、当然ハイクオリティのものを作りたいですので、作曲に取り掛かるまでの時間を極限まで減らすことができるようになりました。」

会社設立当時の“とにかくいいものを作り続けたい、クオリティで勝負したい”という想い。その想いを実現するために真摯に曲作りに向き合い続けてきたユニークノート。会社設立から10年経った今、その楽曲を聴きながらゲームをプレイし、心躍らせる人達が大勢いる。まさに当初の想いが体現されたと言えるだろう。

10年に渡る旅の帰着、そしてこれから

過去10年間、第一線を走り続けてきたユニークノート。そんな同社がこれからの未来、目指すものとはどんなものなのか。

「この10年、とにかく“いいものを作りたい”という想いで突き進み、本当にたくさんの作曲に関わらせていただきました。最近はインターネットの普及で、場所が離れていても瞬時にやりとりができて、良い側面で言うとコミュニケーションに時間がかかりません。だからこそ僕らが“早く、たくさん作れる”わけなんですが、最近は、その反面どこかに忘れてきてしまったものがあるのではないかと感じています。今、そしてこれから大切しにしていきたいのは、もっとアナログでリアルな体験や人との繋がりです。対面の打ち合わせとか、外でのレコーディングとか、人と人とのつながりでより良い曲作りを目指すような仕事ができたらと思っています。」

柴田氏がそう考えるようになったのには理由がある。知り合いのイギリスの作曲家が、生死の境を彷徨うほどの大事故に巻き込まれながらも一命を取り留めたのだ。彼は回復後、わざわざ日本まで足を運び柴田氏を訪問する。『生きているうちにもっと人に会いにいくべきだと、死に直面して気づいた。』そう口にしていたという。

「それともう一つは、僕らより若い世代と一緒に仕事をしていきたいと思っています。以前HALという学校で教えていた時期があるのですが、実は僕の方が色んなことを教えてもらっていたんですね。10代にもすごい人がたくさんいて、それはスキル以上に、パッションや考え方がすごく勉強になったんです。その新しい刺激が、より良い曲作りにもつながると思っています。」

多くの有名なゲームに関わり、ゲーム音楽を世に送り出してきた柴田氏。改めて作品を生み出す喜び見つめ直した時、その答えが“アナログな人と人との繋がり”にあったのだという。作品を作るにあたって、膝を突き合わせてその作品について想いを共にし、情熱を高めあってより良い作品を生み出す。そしてそれが感謝や感動へとつながる。ゲーム音楽という、プレイヤーの感情をいかに動かすかに心血を注いできた柴田氏だからこそ達した答えであるように感じる。

ユニークノートが生み出す音楽と感動に、これからも注目したい。

音作り未来

全てはプレイヤーの感動のために

インターネットの普及で、ゲーム業界もスマホゲームが増えましたし、弊社も取引先企業に中国企業が増えてきたりと、時代の変化を感じます。そんな変化の時代において、それでも“ゲームに音楽が必要”というのは不変です。なぜなら、ゲームがエンターテイメントである以上、プレイヤーの感情を揺さぶる必要があるからです。

僕がゲーム音楽を通じてやっていることって、つまりプレイヤーの感情をうまく誘導してゲームの世界へリンクさせてあげること、これに尽きるんですね。例えばその楽曲が流れるシーンは物語の山場で、ここではプレイヤーの感情を揺さぶり感動の涙を流してほしい、だからそのための楽曲を作る。その結果、その狙いがピタリとハマると、その作曲は成功です。誰に向けて、何の為の音楽を作っているかがすごく明確なんです。

プレイヤーに感動してもらう、そのために僕は音楽を作っていますし、これからもそうであり続けると思います。

取材先情報

会社名(店舗名)株式会社ユニークノート
ご担当者様代表取締役 柴田 徹也
所在地〒156-0042 東京都世田谷区羽根木1-21-1 亀甲新 は68
電話番号03-6379-5099
業務内容ゲーム・アプリ・遊技機・アニメ・映画・CM・アーティストの音楽制作・効果音制作・音声収録
サイトURLhttp://unique-note.co.jp/
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取材時期2019年

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